手書きの想い
2010.01.23 


朝、ポストを見てみると
「20時には帰る 瀬人」と書かれたメモが入っていた。
携帯なんか持ちたくても持てない貧乏人なオレが
親父に見つからないように海馬と取れる唯一の連絡手段がメモだった。
内容は、主にオレはバイトの予定、海馬は出張だとか仕事の予定を書いて交換している。
メモはこうしてポストに入っていたり、稀に海馬が学校に来た時には下駄箱に入っていたりする。

因みに貰ったメモは全部、クッキーの空き箱なんてチープなものに入れているけどきちんと保存してある。

「だって、海馬の字見れるのも特権の一つだもんな。」
よく、字には性格が表れるとか何とか言うけど
アイツの場合は当てはまらない気がする。

「いつもオレのことを『犬』とか『凡骨』だとか言う高飛車女王様の字じゃねーよな」
海馬の字はぱっと見「女の子」だ。
全体に丸みを帯びていて、コロコロしている。

「これがギャップ萌えってやつかね」


*************

メモにあった20時より少し遅れて、海馬邸に到着した。
そして海馬の部屋のドアを3回ノックする。
それがオレが来た合図にしてるから。

「よー海馬ぁ」
「来たか、凡骨。」
「来週のバイトのスケジュール、メモしてきたから渡しとくな。
まぁ、もしかしたらヘルプで呼ばれて急に入るかもだけど」
「了解した。」
「そーいやさ、海馬ってオレのメモ見た後、いつもどうしてんの?」
「…別にどうもしていない。」

「ちょっと失礼しますよ、海馬さぁーん」
海馬の背後に回り、机の引き出しを開けてみる。
「おい、やめろっ…!」
すると、仕事関係の書類やファイルの中にある異質な存在。
宝石箱みたいなのが入ってる。
海馬がオレを羽交い締めにしたが、オレはするりと海馬の腕の中から抜けて箱を開けてみた。
「これ…オレが書いたメモ? え、まさか海馬ちゃんと全部しまってたの?」
「う…うるさい、うるさい黙れ凡骨!」

「…海馬、お前って可愛いのな」
そう言ってオレはまた海馬の背後に回って抱きつく。

「オレもお前のメモ全部しまってあるんだぜー、お前みたいな綺麗な箱じゃないけれどな」
「…っ」

多分、オレもだけど、海馬が耳まで赤くなってる。
これ以上指摘したら、ジュラルミンケースが飛んできそうだから
オレは代わりに栗色の髪にキスを落とした。

字に性格が出るってのはあながち間違いじゃなかったみたいだ。


End.

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藤吉様/absolute-ZERO-

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