おくりもの
2010.02.14 


今年のバレンタインは日曜日だ。女子がざわざわしてるの見ても胸糞悪いだけだからいいんだけどな。
去年は杏子と静香がチョコをくれた。今年はなんもない。このままぼんやり過ぎていくのだろう。
今は海馬の部屋に居る。付き合っているとはいえ、あいつがしおらしくチョコレートを渡してくるわけもなく。
「なあ海馬、バレンタインだな。」
「知らん」
「しらんってこたねえだろ、どうせ今年もいっぱい届いてんだろうが」
「社交辞令のつもりか知らんが、ゴミが増えて迷惑だ」
「失礼な奴だなあお前は・・・」
この部屋にはひとつも無いが、絶対俺が一生かかわることの無いような高級なチョコレートが届いているのだろう。
社員が美味しく頂きましたってか。それとも本当に廃棄されてしまうのだろうか。もったいない話だ。
ぼんやりソファーに寝転んでいる俺をよそに、海馬はパソコンに何か打ち込んでいる。ここに居るということは暇な筈だが、奴はどこまでも勤勉なようだ。
キーボードの上で長い指が軽やかに動く。白い指してんなあ。タッチパッド?の上を滑る指も綺麗だ。
そういえば最近海馬の字を見てない。俺はあの丸っこい字が大好きなのに、何か書いてるところを覗き込んだりすると必死で隠すんだあいつは。
字で思い出したけど、バレンタインのチョコってメッセージカードとかついてるよな。静香が小さいころ、お兄ちゃん大好きとか書いてくれてて、可愛かったな。
そりゃ仕事してる身だし社交辞令が多いかもしれないけど、純粋に海馬を好いてチョコレートを送った奴だって居るだろうに。
そんなことを考えているうちに、特に期待もせず今日まで過ごしてきた俺だが、とたんに海馬からのバレンタインの贈り物が欲しくなってきた。
チョコは別にあってもなくてもいいんだよ。目的はメッセージカードだ。あの字で俺に宛てて書かれた愛のメッセージなんて、考えただけでも興奮する。
思い立ったら吉日だ。
「なあ海馬、バレンタインだから俺に贈り物してくれ。」
「知らん。くだらん」
「そういうなって。なんかメッセージ書いて俺にくれよ。それだけでいいからさ!」
「貴様・・・」
俺の意図を理解して機嫌をそこねたようだ。前から馬鹿にしてるんじゃないっていってんのにわかんねえ奴だな。
「いいじゃん、なんかかいてくれよ!!それくらいお安い御用だろ?」
「貴様の下らん行事のために何故俺がそんなことをしなければならん」
「そんなケチなことばっか言ってると、これだぜ?」
「っ・・・!!」
海馬の表情から動揺が見て取れる。俺が海馬の脇腹をすっと撫でたからだ。それは当然性的な意図を含んでいる行為で、海馬はいつも大げさな程に恥らうのだ。
芝居でもなんでもなく、真剣に恥らっているのが可愛い。まだ直接聞いたことはないけど、あんまり経験ないんだってことが見て取れて、俺は安心する。
「きさま・・・やめろ」
顔が真っ赤だ。こいつ、誰に触られてもこんな顔するんじゃないだろうな。可愛いけど不安になってきた。
「じゃあ俺の要求をのんでもらおうか?」
「・・ぬぬ・・・・この馬鹿犬が・・・・」
海馬は悪態をつきつつ忌々しげに俺を見遣ったが、やがて乱暴に机の引き出しを開けて、これまた乱暴にメモパッドを机の上に放り出した。
ぐりぐりと何かを綴る。のぞこうとしたら「目をぶち抜かれたいか」って言ってペンを向けてきたから俺はおとなしく身を引いた。
暫くして、そっぽを向いた海馬がびしっとメモをこちらに向けてきた。見ると、「死ね馬鹿犬」と書かれている。まったく可愛げがな・・・可愛い!!!!
こんな丸い字でこんなこと書いたら余計可愛いじゃねえか。
うん、すごく満足。でも俺は調子に乗ってしまった。
「こんな文句でいいわきゃねえだろ」
「貴様ごときが俺の書いたものにけちをつけるなど「やっちゃうけど」
海馬は俺をぎりっと睨み付けて「・・・・何をかくか言え」といってきた。
俺は基本遠慮を知らないよ?
「じゃあ城之内愛してるってかいて!!ついでに書いてるとこ見せてくれよ」
「貴様!!こっちが譲歩すれば調子に乗るのもいい加減にしろ!!!」
「あーやるの??」
「・・・くっ」
埒の明かない奴だ。海馬の手元を無遠慮に覗き込む。居心地悪そうに筆を止めていたが、書き始めた。
ああかわいい。紙の上を滑るペン先の軌跡にはカーブが多い。
出来上がった文字は俺にショックを与えた。先程のも可愛かったが、こちらは文句が文句だけにとんでもない。
この文字は海馬が書いたのだと認識するために、海馬の顔とメモ用紙を交互に見つめた。こいつが書いたんだ・・・かわいい!!!
「っ・・・何だ、書き終えたぞ、これ以上貴様の下らん行事に付き合ういわれは無い、退け」
「・・・セックスしたいってかいて」
「凡骨が!!!戯言もたいが・・・・うぁっ・・・・・」
「俺はいいよ、むしろしたい」
「っ覚えておけ・・・!!!」
「・・やっぱ海馬の字最高に可愛い・・・興奮する」
「っ・・・・この色情魔が・・・」
海馬の女子高生のような、どうかしたら小学生のような字で書かれた隠語はとんでもなく卑猥で、俺の劣情を掻き立てた。
ふとみると、海馬は耳まで真っ赤にしてふるふる震えながら「ス」を書き終えるところだった。
「・・海馬の字見てたら勃っちゃった・・・・」
「いっ・・・!!」
海馬がこちらを見た瞬間にたじろぐ。
「や・・・やめろ・・・しまえ!!このい・・やあっ・・!!」
「・・・嫌?お前も興奮してるじゃねーか。」
「誰がっ・・・!さっさと離れろ・・貴様のような変態につ・・・ふあっ」
俺は海馬の股間にひたりと手を重ねた。言わずもがな膨張している。わりと想像力・・というか妄想力は俺とタメを張るようだ。
「へへ・・・お揃いだな」
「下らん・・退けというのが聞こえない・・!!っのかぁあっ!!・・んっ!!」
そのまま強く押してやると、反応する。揉みしだいてやると、ビクビクと小刻みに跳ねながら声を漏らした。
「やだっ・・・ひっ・あっあっあっあっ!!んん・・・うぁっ・・や…っぁん!!!!」
膨らんだそこはゆるく温かかったが、次第に熱を増してきた。
チャックを下ろして海馬の性器を取り出すと、予想通りぬるぬるになっていた。
「っああ!!やめろっ!!こんなのはうそだぁっ・・ひぁあ・・・あっ!!」
「嘘なもんかよ。こんなに垂れ流しておったてといて・・・」
「うううるさいぃ・・・・!!!ああああん・・・!!」
あまり露呈しない亀頭に指をつっこんでぐりぐりと回してやると、快楽に溺れたってかんじの恍惚の表情でビクビク震えながら小さく喘ぐ。
反抗はするものの快楽には弱いみたいだ。俺は心配だ。可愛いからいいけど。
亀頭をいじりつつ、竿を抜いてやると、腰を揺らして俺の手に押し付けてくる。
「はぁっ…んっんっ!!ぃっ…!!はァ…っもっと…ああぁっ!!…」
もっと、だとさ。海馬のほうが何千倍も変態だ。初なんだか好き者なんだかわからない。多分体は正直って奴だろう。
「ふぅう・・・ぅあっああああああ・・・・・!!!」
海馬の欲望のままに抜いて、皮をぐにぐにと執拗に弄ると、海馬はあうあう言いながら射精した。
涎の流れる半開きの口にキスをしてやる。離れようとすると服の胸のところをぐっと掴まれた。
「・・・こんな半端なところで済ませられると思うなよ。」
・・・ささやかだったはずの贈り物は俺が思ったよりも値上がりしてしまうようだ。こんなんどうやってお返しするんだよ。
・・でも、これ海馬の要求だから俺からの贈り物ってことでいいよね??
「・・・一月後に倍返しにしてもらうからな。」


End.

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鳴様/LDD

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